俵万智にはあまり良い印象を持っていない。
もちろん、本人から何か意地悪されたわけではなく、勝手にそう思っている。
なぜ悪い印象を持っているかと言えば、中学校の時の国語の先生が、俵万智のことを悪く言っていたからだ。
当時50歳くらいの女性の先生によれば、テレビに出たりしてクリクリした目の生意気そうな顔、と言っていた。この小娘が、とでも言いたげだったのをよく覚えている。
ちなみにその先生は、カールスモーキー石井が好きだと言っていた。
何も知らない生徒に悪い印象を植えつけないでほしいものだが、先生にとっては若くして文芸で有名になった俵万智に嫉妬のようなものがあったのかもしれない。
歌人すべての中でもっとも有名だ、と言ったら言い過ぎか。
藤原俊成より良寛より有名と言えば有名ではないか。
大人になって今一度考えてみると、やはりあまり良い印象ではない。不倫のイメージがあるからか。歌集『チョコレート革命』のイメージか。
ぶっちゃけ感というか、こういうのが好きなんでしょう感というか。与謝野晶子のような情熱に、わかってやってます感がプラスされた感じ。手のひらで踊らされているような印象。
結局、俵万智のことを気にせずにはいられない。
気にせずにはいられないのは個人的な経験も影響している。
まず、早稲田大学ということで先輩であるということ。
その大学で私も俵万智の師匠の佐佐木幸綱の講座をとっていたこと。
万葉集の講座だった。先生は狭野弟上娘子推しだったと思う。
君が行く道の長手を繰り畳ね焼き滅ぼさむ天の火もがも 狭野弟上娘子
あなたが行く道を折りたたんで燃やしちゃうような聖なる火があったらなあ、くらいの意味と思う。エキセントリック。
当時佐佐木幸綱と俵万智は狭野弟上娘子について日本酒でも飲みながら会話したのだろうか。佐佐木幸綱と言えば酒だ。
そして、私は就職活動の中で信越化学を受けたが、面接で、俳句とか短歌が好きだ、という話の流れで面接官が、歌人の俵万智のお父さんがうちの会社にいるよ、と言っていた。えっ? これも何かの縁と思ったが、落とされた。
文学界隈ではそれほど話題にならないが、俵万智のお父さんは有名な学者さんなのだった。そういう観点で調べてみたら、お父さんについての歌もわりとあるようだ。
ひところは「世界で一番強かった」父の磁石がうずくまる棚 俵万智『サラダ記念日』
歌の通りで、俵好夫先生が発明した磁石は、今でも世界2位の強さだそう。
そんなこともあり、俵万智が気になって気になって仕方がない。
最近では子育てについての文章も気になる。
『サラダ記念日』は、さぞセンセーショナルだったことだろう。
我々の世代で例えるならば、宇多田ヒカルの登場のような。宇多田ヒカルはミュージシャンに嫉妬されたのだろうか。
追記 書きながら思い出したが、佐佐木幸綱先生の講義で印象に残っているのは、国歌大観という、和歌集の和歌が全て収められた本が存在するということ紹介していたこと。
そして、新幹線を運転していると、鳥がフロントガラスにあたってきて血だらけになるということ。この話は『佐佐木幸綱の世界7』でも取り上げられているので、短歌界隈では有名な話であり衝撃的で印象に残るものなのだと思う。
以下、運転士を務めた歌人の歌。
次々に当りくる鳥の血に染まる前面ガラス眼になじみくる 西田郁人