野坂昭如はどんなイメージだろうか。
テレビカメラの前で大島渚をぶん殴ったのが有名なので、暴力的で怖いイメージがある。
しかしこの人もすごい人と思うのだ。
直木賞作家。
『火垂るの墓』『エロ事師たち』。
『エロ事師たち』は国語便覧に載っていたので覚えている。
内容は中学、高校で読んだのなら衝撃的だろうが、私が読んだのは大学生の時なので、そういう世界があるのだ、という免疫はついていた。
井原西鶴など会話形式が江戸の文学に近いなどと言われているようだ。
私は大学で江戸の文学について研究したいと思ったことがあるので、ますます愛着が湧く。
野坂昭如も早稲田大学だ。
『おもちゃのチャチャチャ』の作詞も野坂昭如だ。
『おもちゃのチャチャチャ』は「なまりのへいたいトテチテタ」が良い。
ここで思い出すのが、たまの『さよなら人類』の「サーベルの音はチャラチャラと」。
これも良い。
「ジャラジャラ」ではなく「チャラチャラ」であることによって、重苦しい事象を軽く表現する詩情が出ている。
悲劇的な場面で明るい曲を流す、ああ入った類の感覚だ。
『さよなら人類』と比べると、「おもちゃのチャチャチャ」はなんとスッキリして素直なのかと思う。
「フランスにんぎょうすてきでしょ」も、あの野坂昭如のイメージを重ねると逆にゾワゾワする。心を揺さぶる。
字合わせ的なわざとらしさが無いのが綺麗だ。
字合わせ的なわざとらしさというのもなかなか伝わらないものと思っていて、歌で言うと2番の歌詞で、「〇〇だよ」となりがちだという事象だ。
パッと具体例が思いつかないのだが、もっと表現なかったのか、という残念な気持ちになる。
もう一つ「おもちゃのチャチャチャ」から連想するのは、永井陽子の「べくべからべくべかりべしべきべけれすずかけ並木来る鼓笛隊」と言う歌だ。
これは一方取られました、という気になる楽しい歌だ。
野坂昭如は歌も歌っており、上手いとは言えないが味があって良い曲がある。
「マリリンモンローノーリターン」とか。
ライブ盤で『鬱と躁』というのがあり、確か女子大の学園祭でのライブだったと思うが、客いじりをしており、面白い。
現代にはそぐわないが、盛り上がるだろうなというパフォーマンスだ。