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俳句短歌

ゑゑゑゑゑ←鶏肉

 『はじめての近現代短歌史』を読んだが、面白かった。

 自分が短歌が好きだということが改めて分かった。

 現代短歌でよく読んだのが穂村弘だ。

 穂村弘は短歌界でも評価され、エッセイも面白く、とくに短歌の入門書など勉強になった。

 一方で『はじめての近現代短歌史』では加藤治郎に厳しい気がした。

 それにしても以下の歌は傑作と思う。

 にぎやかに釜飯の鶏ゑゑゑゑゑゑゑゑゑひどい戦争だった  加藤治郎

 わあ、釜めしだ、ふたを開けたら湯気が上がり鶏肉がゴロゴロで嬉しいな、というウキウキ感が否定される。

 松屋のごろごろ煮込みチキンカレーのウキウキ感があってもよさそうなものだが、そのような感は一切無い。

 ひどい戦争とあるので、ネガティブな雰囲気が支配している。

 ネガティブな歌という観点から、鶏肉の羅列がサルトルの『嘔吐』でのマロニエの根のような実存主義的に気持ち悪く感じられ、かつニワトリが「ゑゑゑゑゑ」とうめいているように鳴いているような印象を受ける。

 そのうめき声が戦争で犠牲になった人間にも重なり、なんとも映像化不可能で不思議な感覚になる。

 三十一文字でこんなに感情を揺さぶり、疲れてしまうほどの威力を持っている。

 加藤治郎も早稲田大学だ。